2011/12/31

At a Milonga




どうしてもその場所にいってみたく
でもいつもしまっていて
だから昨日、電話をした。

「明日はあいていますか。」
「いらっしゃるのであれば開けます。」



今日は凍えるような寒さで、
約束を守らず家にいることもできた。
店主は、
私の名前も電話番号も聞かなかったから。

でも店主は、私を待つというよりも
今日は必ずそこにいる気がして
私は、そのアイビーの茂るミロンガをたずねた。
※タンゴが踊られる場所


アルゼンチンタンゴには、これしか考えられない、
VOLEUR DE ROSE(バラ泥棒)の香りを
静かにまとって。




やはり店主はそこにいて、
初めて会う私を静かに迎え入れ
何故か
ホットオレンジを作ってくれた。


アルゼンチンの作家・ボルヘスの書いた
タンゴについてのある断章に導かれ、
30年前にこの場所を作ったこと。
ずっと前はファッション業界でアタッシェ・ドゥ・プレスを勤め、
その後イタリアに渡りオートクチュールのブランドを営んだこと。
世界を旅したこと。
今度スペインに行きます、というと、
それなら向かい側のモロッコのタンジェに行くといい、
自分はそこで死にたいのです、
ということも教えてくれた。








そして
店主に誘われ、
アルゼンチンタンゴを15分ぐらい2人で踊った。

女性がリードすることはありえない、
もし男性が下手ならば、
相手の女性は本当は上手であっても
一緒にこけるのがタンゴ。

男が格好よく踊ることはいうまでもなく、
リードもできなければ、男ではないという。

もちろんそのリードというのは
自分が目立つためではなく女性を最も美しく見せるための
リードであるというけれど。





「ココ・シャネルも、香水をつけない女性に
未来はない、といったでしょう。
男性が女性をリードすることは、
それと同じぐらい理由なくも当たり前のことなんだから。」

タンゴの距離で一緒に踊り、
私のVOLEUR DE ROSEの香りに気がついたのか、
それは分からない。

けれど、そんな一言を店主は最後に言った。



こうやって、
私と香りの間に、またひとつ
秘密のストーリーができていく。



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